beipana

スチールギターを用いたレトロなハワイアン・サウンドとモダンな質感をミックスしたチルアウト音楽を制作。近年SNSで披露している『ハワイアン+ローファイ・ビーツ』による演奏動画は、機材メーカー『ROLAND』のインスタグラムのグローバルアカウントで紹介された。2022年はフランスのオンライン・フェスティバル『Lofi Festival』にも参加。https://linktr.ee/beipana

【雑記】シューゲイザーとLUNA SEAについて

このブログは2024年4月14日に開催された「ヴィジュアル系とシューゲイザー」というトークショー鑑賞に際し、トークショーの内容とは別に、以下の個人体験などを書き綴った雑記です。

  • 自分が10代で味わったLUNA SEAを経由したシューゲイザー私的体験記
  • 近年の海外の若い世代のTikTok発祥のシューゲイズ・ムーブメントによって、語られる機会が多くなったシューゲイザーの定義や議論の概要
  • 近年語られるシューゲイザーの定義とLUNA SEAとを照らし合わせて感じたこと

最後にトークショーの感想も簡潔に記載してます。

1.LUNA SEAを経由した私のシューゲイザーとの出会い

まずは、なるべく手短に自分が10代で味わったLUNA SEAを経由したシューゲイザー私的体験記を記述しつつ、LUNA SEA、特にSUGIZO氏がシューゲイザーに影響を受けているかも、ご本人の発言などを元に記載します。

My Bloody Valentine - Feed me with your kiss

自分のシューゲイザー初体験は、SUGIZO氏のラジオを経由して聴いたMy Bloody Valentineの『Feed me with your kiss』。おそらく1996年か97年の初頭だったはず。

ラジオを録音して繰り返し聴いていたためSUGIZO氏が紹介時に「Feed me with your love…じゃなくてKiss」と曲名を言い間違えていたこととセットで覚えている。

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この初体験では、シューゲイザーの象徴のひとつであるギターサウンドは強く印象に残らなかった*1。なぜなら、その時すでに触れていたLUNA SEAの『Ture Blue』 や『Desire』といった楽曲群のギターも自分にとってはノイジーだったから。

そのLUNA SEAの『Desire』について、2015年にSUGIZO氏は以下のように発言されている。

そして最も重要なのが、ここでジャガーの味を知ったということ。…実は、ジャガーを手に入れたのはちょっとした勘違いで。マイブラの「ラヴレス」のジャケット写真に写っているギターを、ずっとジャガーだと思い込んでてね。
よく見たら、あれはジャズマスターだったんだよね(笑)。でも、手に入れて実際に使ってみると、“来た!”っていう感覚があって、瞬く間にその虜になってしまった。ヒット・チューンとなった「DESIRE」でもジャガーを使いまくって、オリコン1位の曲のギター・サウンドが“ブッガッブッガッ”って。こんな汚いギターの音のポップ曲なんてないよって言われたね(笑)。

引用:SUGIZO (GUITAR MAGAZINE SPECIAL ARTIST SERIES)

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つまり、マイブラの『Loveless』を意識して手にしたジャガーによって、楽曲そのものはシューゲイザー的(この部分の定義は次章で記載)ではないかもしれないけれど、騒音の探求*2をしている過程で生まれたのが『DESIRE』ということになる。

なお、このラジオでは「シューゲイザー」という言葉は使っていなかった。…はず。エアチェックして繰り返し聞いていたので間違いない。と思う…。

SUGIZO - Shut Up n Prayer

90年代のSUGIZO氏ラジオでのシューゲイザー関連音源で、印象に残っているもうひとつがこちら。SUGIZO氏のご自身のソロ作のリミックス『Shut Up n Prayer』。

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リリース当時にラジオでご自身が流された際「マイブラバージョン(笑)」とちょっとジョーク交じりに言っていたのをなんとなく覚えている(違ったらすみません。いや、でも仰ってた記憶…)。そういえば、ここでもシューゲイザーという言葉は使っていなかったような*3

このリミックスを手掛けたKoniyangさんは日本のエンジニアの方で、Buck-Tickの『COSMOS』にも携わっている(discogs情報ですが)。

上記リミックスと時期が近いからか、『COSMOS』収録の『CANDY』との親和性も感じられるのがおもしろい。

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SUGIZO -愛と調和

ソロでは作品ごとに多様な音楽性を打ち出すSUGIZO氏。2020年のソロ作『愛と調和』は、CDとしてリリースされた『Premium Edition』のライナーノーツを読むと、シューゲイザーの影響が色濃い作品であることがとてもよくわかる。

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1:まずブックレットには、本作に対して"特に影響を受けたアルバムとしてSlowDiveの『Pygmalion』…"と解説文で明記されている。

2:DEAD ENDのカバー『So Sweet So Lonely』については以下コメントがある。

僕の感覚としては、コクトー・ツインズ的なアプローチになっていきました。コクトー・ツインズの作品の中で、リズムが薄く、歌モノでありながらもギターを中心とした、エコーの深いアンビエント、シューゲイザー的なアプローチですね。

3:さらに、マイブラのTシャツを着てレコーディングに臨むSUGIZO氏の写真も収録されている。

www.hmv.co.jp

SUGIZO氏が関わる作品のパッケージで、シューゲイザーについてここまで直接的に言及(&投影)しているものは他にはないのではないかと思う。上述の通り、90年代にSUGIZO史観によるシューゲイズを経験してきた身としては、本作はとてもとても感慨深い作品でした。

2.シューゲイザーとLUNA SEA

本項以降は、2024年2月に公開された、シューゲイザーについて識者や関係者が多くを議論しているポッドキャストのエピソード『Inside The TikTok shoegaze revival』を参照し、シューゲイザーの定義・概要をまとめつつ、シューゲイザーのLUNA SEAへの影響や所感を綴っていきます。

『Inside The TikTok shoegaze revival』の詳細はこちらのアンカーリンクからどうぞ。

シューゲイザーの定義

ポッドキャストのスピーカー達の話を要約すると、シューゲイザーは主に以下のように定義されている。

  1. リバーブやディストーションを多用し、ギターを前面に押し出した、アトモスフェリックやシネマティックという言葉が最適

  2. 圧倒的にラウドで、ヴォーカルは一般的にミックスのかなり後ろの方にいる

  3. ある種のムード、悲しみや憂鬱さ、ドラマチックなカタルシス、官能的な要素を感じられるアティテュードがある

  4. ジャンル純粋主義者の多くが、シューゲイザーの基礎として認識しているのはMy Bloody Valentine、Slowdive、Ride

  5. ただし、上記3バンドは実際にはかなり異なるサウンド。ディストーションやリバーブ・ヴォーカル、ギターリフにリバーブのようなものを使っているにもかかわらず、それぞれのバンド毎に異なる多くの音のテクスチャーがある

  6. コクトーツインズは、シューゲイザーの教科書的、プロトタイプ的な存在

LUNA SEAに対するシューゲイザーの影響

そしてLUNA SEAに対するシューゲイザーの影響は、SUGIZO氏が様々なインタビューで公言している点をまとめると以下のようになる。

  1. 具体的には、My Bloody Valentine、RIDE、Slowdive、Cocteau Twins、Swervedriver といった、シューゲイザー・オリジン的なバンドから影響を受けた

  2. RYUICHIの歌が上手かったため*4、LUNA SEAはシューゲイザーにはならなかった(故にオリジナリティが出せた)

  3. 奏法や機材がわからなくて、シューゲイザーにはなれなかった(故にオリジナリティが出せた)

LUNA SEAのシューゲイザー的音源の代表例

上記のシューゲイザーの定義、そしてLUNA SEAへの影響を踏まえ、シューゲイザーさを感じられる楽曲を主観で選んでみました。

NO PAIN

youtu.be

ジャガーによって作り出される空間的ギターノイズの壁がシューゲイザー的。このライブバージョンが特にわかりやすい。3:05あたりの間奏部分はリューイチの代わって、ミックス的に音量が後ろ気味な儚い子供のコーラスが入るため、かなり顕著にシューゲイズしてる印象。

RAY

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こちらもNO PAINと同様に、ギターをかき鳴らして空間的なノイズの壁のようなアレンジがシューゲイザー的に聞こえる。

AURORA (2023Ver)

空間的なノイズの壁的なギターだけでなく、浮遊感あるギターがシューゲイザー的かと。これはご本人も明言している。

M-3 AURORA/LUNA SEA

原曲時には到達できなかったグルーヴの深み、オルタナ&ポストロック感、ギターノイズ&フィードバックを何層にも重ねたシューゲイザー的アプローチ、ブライアン・イーノ的アンビエント感等、あらゆるエレメンツが現在のLUNA SEAだからこそ表現し得た楽曲。

今回のデュアル・セルフカバー・アルバムの中でも最も変化と進化を体現したといえる珠玉のポップソングです。

www.fmyokohama.jp

以下はSUGIZO氏の2021年時点でのケヴィン・シールズに対する発言。

当時はいわば、テクニックを兼ね備えたケヴィン”のようなギタリストになりたかった。演奏において、テクニックというのはボキャブラリー、つまり言葉の巧みさだと思いますが、僕が好きなジョン・マクラフリンやパット・メセニー、ロバート・フリップたちはそういうタイプですよね。反対にギターを“ペインティングの道具”として扱ったギタリストが、ケヴィンやロビン、もっとさかのぼればルー・リードだと思う。そして僕は”この両端を融合して、新しいものを作りたい”とずっと思っている。

引用:ギター・マガジン2021年6月号 (特集:ケヴィン・シールズ / [マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン]“美しいノイズ”を生み出す天才のすべて) 

この2023年版AURORAは、ここで述べられているペインティング的なアプローチを、LUNA SEA楽曲群の中で最も色濃く感じられる。

RECALL

以下2021年のインタビューを参照しピックアップ。

「RECALL」という曲は実は“Cocteau”っていう仮タイトルだった。コクトー・ツインズ的なサウンド・プロダクションをやりたかったんです。

引用:ギター・マガジン2021年6月号 (特集:ケヴィン・シールズ / [マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン]“美しいノイズ”を生み出す天才のすべて) 

LUNA SEAのSwervedriverからの影響

上記では、空間的な歪んだ音色によるギターの壁や耽美的なヴァイブスによって、シューゲイザー的アプローチをわかりやすく感じられる楽曲を選んだが、LUNA SEAとシューゲイザーとの関係を記述する際には、その特徴から少し離れた『ROSIER』や『STORM』についても言及する必要がある。

ROSIER | STORM

LUNA SEAの代表的な曲でもある『ROSIER』や『STORM』は、SUGIZO氏曰くシューゲイザーの第一世代として、マイブラ、RIDE、SlowdiveとともにピックアップされるバンドSwervedriverを参照して誕生したとのこと。

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大きかったのが、今で言うシューゲイズー当時はUK ギター・ノイズと呼ばれていたーーマイブラやスワーヴドライバーで、その影響が「WISH」などに顕著だね。シューゲイズの影響はその後も続いて、スワーヴのあの感覚に影響を受けて生まれたのが、実は「ROSIER」であり「STORM」だった。でも、やり方もわからなかったし、いわゆるシューゲイザーにはなれなかった。

引用:SUGIZO (GUITAR MAGAZINE SPECIAL ARTIST SERIES)

この話を踏まえてSwervedriverを聴くと、特に『Pile up』のイントロ~前半からは、「シューゲイザーになれなかった」とはいえ、LUNA SEA楽曲への影響を結構ダイレクトに感じられる気が。今にもRYUICHIの声が聞こえてきそう…。(個人的には昨今のアニソンの起源って感じもしなくもない)

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だけどこのサウンドは、自分の馴染みのあるシューゲイザーとはちょっと違うような気もする…と、長らく感じていたこの違和感(※)。今回、参照しているポッドキャストのエピソードによって、少し解消できました。

※ [補足] この『Pile up』および『Storm』『ROSIER』にまとわりつく感覚は、ヴィジュアル系とシューゲイザーの会場でも近しいものを感じられ「? これシューゲイザー…?」という空気が流れていた様に思います。

シューゲイザーの基礎的な定義から見たSwervedriverの位置

上述のシューゲイザーの定義とSwervedriverを照合すると、空間的で歪んだギター、全体的にミックスのかなり後ろにいるボーカルという点は当てはまる。

そして基礎となるMy Bloody Valentine、Slowdive、Rideの3バンドですら各々が異なる要素を持っているため、Swervedriverにも違和感を感じるのはごく当たり前な感覚なのかもしれない。

だけどSwervedriverには、マイブラ、Slowdiveが持っている耽美性やムーディーなヴァイブス、つまり「アティチュード部分」がやや足りない気もする。

Swervedriverに対するこのモヤモヤは、引用しているポッドキャストのスピーカー達による以下の説明によって少し解消された。

MBVやSlowdiveのような、アイコニックな作品の直後に登場したバンドの場合、Catherine WheelやSwervedriverのように、より伝統的なロックの要素をサウンドに取り入れるようになる。

なるほど。このシューゲイザーとSwervedriverの位置関係を踏まえて、LUNA SEAへの影響を整理すると、少しすっきりする。

  • LUNA SEAの『ROSIER』と『STORM』は、Swervedriver="シューゲイザーに伝統的なロックの要素を取り入れた音楽性"を参照した

そうえいば「Swervedriverを参照した」とSUGIZO氏が公言する『ROSIER』や『STORM』の原曲の作曲者は、SUGIZO氏ではなくロック・オリエンテッドな志向が強いJ氏だ。

つまり、伝統的なロック要素のあるSwervedriverを参照することで、LUNA SEAは以下の折り合いをつけることができたようにも思える。

  • バンド全体が志向する耽美的アティチュード
  • SUGIZO氏が志向するロックだけでない実験性やアンビエント感諸々
  • J氏が志向する伝統的なロック感

これらの折衷がうまくいった結果、代表曲が生まれ、後にもフォロワーを多く生むような日本のロックのひな型のひとつにもなったのではないか。

(故にSwervedriverの『pile up』(の特にイントロや前半部分)には近年のアニソンとの類似性を感じてしまうのかも。(勝手な見解。すいません。))

 

他方、『AURORA』『RAY』『NO PAIN』といったシューゲイザー的LUNA SEA楽曲としてピックアップしたものは全てSUGIZO氏原曲だ。それらからは、伝統的なロック要素よりもアンビエントを志向する空間的な騒音ギター、耽美性を色濃く感じられる気がするし、参照元についてもスワーブではないバンドやアンビエントなどへの言及が見つけやすい。

 

3.『Inside The TikTok shoegaze revival』について

繰り返しになりますが、上述のLUNA SEAに対するシューゲイザーの影響を整理するにあたり、ポッドキャスト番組『The Culture Journalist』のエピソード『Inside The TikTok shoegaze revival』にて識者、関係者たちが語るシューゲイザー・オリジン的世代のバンドの定義が大変参考になりました。

ここからは、そのエピソードの概要や気になった個所をピックアップします。

Tiktokでのシューゲイザー・ブームとは

ここ最近"2023年頃からTikTokでシューゲイザーがブームとなっている"というテーマで、StereogumやPitchforkで記事が掲載されている。

www.stereogum.com

この流れを受け、2024年2月にはポッドキャスト番組『The Culture Journalist』が、Stereogumに寄稿した方と、ニューヨークのシューゲイズ系譜のバンドDIIVのドラマーの方を招いて『Inside The TikTok shoegaze revival』なるエピソードを公開した。

 

以下は概要。

Slowdiveの5枚目のアルバム『everything is alive』は、35年のキャリアの中でも前例のない成功を収めている。かつてないほど多くの楽曲を売り上げており、最近ではビルボード・アルバム・セールスで初のトップ10入りを果たした。この状況はある決定的な要因に関係している。それはSlowdiveの音楽がTikTokで広まったということだ。


ピッツバーグ在住の音楽ジャーナリスト、イーライ・エニスは12月、『Stereogum』誌に「TikTokはシューゲイザーをかつてないほどビッグにした」という特集記事を掲載した。Spotifyを閲覧していた彼は、彼が聞いたこともないシューゲイザーにインスパイアされた新しいアーティストたち(wisp、flyingfish、quannnic、sign crushes motoristなど)を偶然発見し、彼らは数百万ストリーミングを記録していた。さらに掘り下げると、これらのアーティストはTikTokでさらに人気があることがわかった。彼らの多くはまだ10代で、寝室や学校の授業の合間にDAWでトラックを制作していた。そして彼らの中には、たった1、2曲でメジャーレーベルとの契約を持ちかけられる者もいる。

およそ40年前に生まれたシューゲイザーというサウンドが、10代から20代前半の人たちにこれほど語りかけてくるのはなぜだろう?TikTokのようなプラットフォームは、音楽におけるキャリアのあり方や、ファンであることの意味、あるいはシューゲイザーのようなジャンルの音的要素が強調されたり軽視されたりすることの本質をどのように変えているのだろうか?そして、伝統的にこうしたサブカルチャー的なサウンドを育んできた物理的なシーンやコミュニティからかけ離れた、不可解な推薦アルゴリズムに基づいて音楽の夢が作られる(そして破れる)世界で、私たちは何を得、何を失うのだろうか?

 

イーライは、Z世代が牽引するシューゲイザー・リバイバルを取材し、その中心人物たち(若手クリエイターたち)に話を聞く中で学んだことについて語る。また我々の同志ベン・ニューマンの視点も活用した。彼は我々の新しいオーディオ編集者であり、DIIVという小さなバンドのドラマーでもある。2010年代にシューゲイザーの影響を受けたアーティストの初期の一派として、DIIVを皆さんもご存知だろう。

この概要の通り、本エピソードでは、TikTok発と目されるシューゲイザー・リバイバルを整理するために、定義、新旧アーティストへの言及、該当のStereogum記事の概要、記事に対するリアクションなど、とても興味深い内容がMCを含め4者の視点から語られている。

定義への言及

定義への言及箇所その1.

以下は、シューゲイザーのアティチュードについての言及内容。

- シューゲイザーのアティテュードや視点についてはどう定義すべきでしょうか?
- シューゲイザーというのは、直感的に言うと地獄のように陳腐なんだけど、ある種の"ムード"といえるよね(笑)
- そうだね。特にSlowdiveは超ムーディーなバンドだと思う。 悲しいとか憂鬱とかいう言葉は使いたくないけど。 でも、Slowdiveを聴いていると、いつもちょっとした悲しみを感じるんだ。
- そうね、大きなカタルシスのようなエネルギーね(笑)
- ロマンチックな要素もある。 官能的な要素もあるし、悲しみやドラマチックなカタルシス、官能的な要素もあると思う…。TikTokerがこれ以上何を望むというの?(笑)
-"ヴァイブス"だね。 (笑)

定義への言及箇所その2.

エピソード冒頭で言及されていた、音楽的側面に関する内容。

シューゲイザーは、リバーブやディストーションを多用し、ギターを前面に押し出した、アトモスフェリックやシネマティックといった言葉がぴったりの音楽だ。圧倒的にラウドで、ヴォーカルは一般的にミックスのかなり後ろの方にいる。

定義への言及箇所その3.

中盤で改めて言及されていた内容。

- 私はジャンルの純粋主義者ではないのですが、ジャンルの純粋主義者たちはどのように定義するのでしょうか?

- 私にとって、(シューゲイザーの)クラシックは、リバーブやディストーションを多用し、ギターを前面に押し出した音楽だ。

- 古典的なシューゲイザーの元祖は超ラウドでヘヴィなものだったけれど、それに加えて、すごくきれいでメロディアスな要素もある。

- だから、バンドによってその違う部分を取り入れているんだと思う。だから定義が曖昧になるんだ。ヘビーな部分だけとか、きれいな部分だけとか、シンセの部分だけとか、リバーブやディレイやディストーションを使うだけとかね。

- 多くのシューゲイザー純粋主義者がシューゲイザーの基礎として認識しているMy Bloody Valentine、Slowdive、Rideについて考えると、この3つのバンドは実際にはかなり異なるサウンドだ。

-マイブラは奇妙なアートロックバンドのようなもので、他の誰にも似ていないと思う。スローダイブはとてもきれいで、彼らのサウンドにはメロディックな要素がある。
- 彼らは皆、ディストーションやリバーブ・ヴォーカル、ギターリフにリバーブのようなものを使っているにもかかわらず、それぞれのバンドとは異なる多くの音のテクスチャーを持っていた。

以下は、コクトーツインズについて言及されていた内容。

-コクトー・ツインズはシューゲイザー?それともシューゲイザーに近しいもの?
-シューゲイザーは、シューゲイザーのテキストみたいなものだけど、たぶん近しいものだよ。
-そう、近しいものだね。プロトタイプかも?
-そうだね。

TikTok内部のシューゲイザー受容状況

動画、ムードとの相性の良さから生まれるコミュニケーションとしてのシューゲイザー

以下は、TikTokでシューゲイザーがブームになっている背景について。

TikTokは今、Z世代の子供たちのたまり場になっていて、デフトーンズが若者に大人気で、あのバンドが持っているシューゲイザー的な要素が、若い子たちが作っているシューゲイザーのサウンドに直接影響を与えているんだ。

動画やムードとの相性もいいしね。Dropは、このプラットフォームで人々を惹きつけたり、人々とコミュニケーションするために使おうとしているよ。一口サイズの感情やフィーリング、ちょっとした表現にぴったりなんだ。

アティチュードの定義とこの受容状況を整理すると、若者たちはシューゲイザーの「大きなカタルシスを得るヴァイブス*5」を、視覚的なメディアとセットで得ているともいえる。

これがわかりやすいかも。

@halflyfeai #angel #angels #fallenangel #fallenangels #nephilim #aiart ♬ you do the worst - Nextime

 

www.tiktok.com

少しLUNA SEAの話に少し戻るけど、このシューゲイザーの「大きなカタルシス」を耽美的な、悲しげな世界観の映像ともに享受している感じは、自分が10代でLUNA SEAを聴いていた自分の体験と重なる部分が多いように思えた。

つまり、LUNA SEAが黒服をまとい、耽美的な世界観とともにシューゲイズしてくれたおかげで、私は10代のときに、今の海外のtiktokの10代が新旧シューゲイザーから得ているものと同質のカタルシスを得られたのかもしれない。

BGM的消費

以下の発言も興味深かった。

-アルゴリズミックな成功を超えて、シューゲイザーが今人気を博している理由は何だと思いますか?シューゲイザーのサウンドには、この世代に響く何かがあるのでしょうか。


-その質問は、私が取材中にインタビュー対象者(若手シューゲイザーミュージシャン)全員に投げかけたんだけど、誰ひとりとして驚くような答えは返ってこなかった。 でも共通する考え方のひとつは、「暖かくて安らぐような音楽」だと思う。
私が持っている皮肉な答えは、シューゲイザーはちょうどいいバックグラウンド・ノイズだということ。 受け身でシューゲイザーを聴いていても、歌詞を聞き逃すことはない。

Tiktokerたちは、シューゲイザーをBGMとしてバックグラウンドノイズとして聞いているという。

なんとなく、2010年代最後のローファイヒップホップのヴァーティカルメディア版という感じでもあるのかなと。ここら辺はネット文化的観点で興味深いので観測し続けたいところ。

4.本ブログの結び&トークショー感想

雑記なので何か結論めいたものは特になく、ヴィジュアル系とシューゲイザーという催しの開催を認識し、参加に伴い事前準備として色々と自分の体験、シューゲイザーそのものについて改めて得た情報を、ただただ書き綴ってみました。

トークショーについては、主催の方々が別途レポートを出されるようですので、なるべくトークショーの内容で得た知識や、主催の方々によって新たに知った参照元情報は、そのレポートが公開されるまで避けるよう意識しました。

トークショーの感想

上述の通り、SUGIZOラジオでマイブラを知った身なので、シューゲイザーとLUNA SEAは密接に関わっていると認識していたものの、他のヴィジュアル系(と括られることもある)バンドとの関連は全く知らなかったため、多くの話を興味深く拝聴しました。

また、BORISは知っていたものの、私は国内のシューゲイザーシーンをほぼ知識がないことにも気づきました。いくつかのシューゲイザーバンドの紹介もあり、こちらも興味深かった。

しかし何よりLUNA SEA『AURORA』再録版を、ライブ以外の場で他者と共有するかたちで大きな音で聴けたのがとても嬉しかった。ここで述べた「シューゲイザーによって得られる大いなるカタルシス」は、ライブや一人で聴くことで体感できるけれど、トークショーは、こうした耽美で内省的な音楽をカジュアルにシェアできる場でもあり、かなりレアな経験となりました。クラブで機能的に聴くのともちょっと違うだろうし。

イベントの最後に「そろそろ終わりも近いし『Loveless』も聞きましょう」というフリの後でLUNA SEAの『Loveless』が流れたとき、会場で何人かの方が「え、そっち?」と思わず声を出して戸惑っていたのがおもしろかった。実際、自分もMBVの『Loveless』が流れるものだと思ってしまった。

補足メモ

どうにも収まりがつかないけど、書いておきたかったことを適当にここにメモ書きのように置いておきます。RIDEのMark Gardenerが、2024年4月10日公開のMusicRaderの動画でシューゲイザーについて見解を述べていた。

"当初、「シューゲイザー」という言葉は、グランジやニルヴァーナが台頭してきたときに、イギリスのジャーナリストたちが私たちに投げかけた蔑称だった。その後、ジャンルを表す言葉になったが、それが有益だったかどうかはわからない。

アトモスフェリックなギターを少し使えば誰でも突然「シューゲイザー」になるという意味で、シューゲイザーはとても懐が広く、私たちはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやコクトー・ツインズと並んで初期のパイオニアとみなされているのだろう。どちらのバンドも素晴らしくて面白い音楽を作るから大ファンなんだけど、私にとっては、ただ良い雰囲気の曲を書くことなんだ。このジャンルを "サウンド "として考えた場合、それほど面白いものではないんだ。

Ride's Mark Gardener: "I’m definitely a gear nerd, but I had to stop otherwise I’d have gone bankrupt" | MusicRadar

*1:『Feed me with your kiss』は、2小節おきに1拍ずつ増えていくという不思議すぎる変拍子が耳に残った。

*2:1996年時点では、"ジャガーはクリーンサウンドの方が向いている"との発言もされており、騒音だけを探求されていたわけではない

*3:そもそも自分はいつシューゲイザーという言葉を認識したんだろうか…。スーパーカーのデビュー盤のレビューとかだったっけな?「マイブラ・ジザメリ・ダイナソー」といった形容とセットで認識したような。当時の雑誌を読み返したい

*4:定義ムズイですが"声量と安定感があった"的なニュアンスに捉えてます

*5:このニュアンスは、静寂からの轟音ギター炸裂という"緊張と解放"的な楽曲構成の側面も併せて語っている可能性もあります

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