beipana

スチールギターを用いたレトロなハワイアン・サウンドとモダンな質感をミックスしたチルアウト音楽を制作。近年SNSで披露している『ハワイアン+ローファイ・ビーツ』による演奏動画は、機材メーカー『ROLAND』のインスタグラムのグローバルアカウントで紹介された。2022年はフランスのオンライン・フェスティバル『Lofi Festival』にも参加。https://linktr.ee/beipana

デビッド・バーン、プラスチックスと1980年前後の日本を振り返る

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2007年にアメリカのChronicle Booksから刊行された『Style Deficit Disorder』に、デビッド・バーンのインタビューが掲載されている。内容は、プラスチックスとメロン、そして1980年前後の日本について。

トーキング・ヘッズ、DEVO、B-52sなどが初めて日本をツアーした際、自分たちとほぼ同じようでいて、しかしとても日本的なシーンがあることに気付いた驚きを想像してみてほしい。東京のシーンはプラスチックスと呼ばれるバンドを中心に、ファッション・デザイナー、イラストレーター、グラフィック・デザイナーなどが参加していた。

プラスチックスという名前は、『日本製品がプラスチックである』という西洋の一般的な認識を皮肉ったものであり、それゆえに『西洋製の優れたアイテムの劣化コピー』ということになる。この事実を認め、それをからかうと同時に祝福すること ー プラスチックスとその子孫にあたるメロンは、ある程度そうしたコンセプトを持ちたかったに違いない。この意味において、彼らは世界をまもなく飲み込む日本製品と発明の波の到来を予測していたともいえる ー ウォークマンは日本でようやく販売され始めていたが、世界はまだ知らなかった。


日本の輸出に対する欧米の認識の180度の反転は、当時まだ起きていなかった。間もなく日本の製品は、世界で最も上手く設計され、先見の明があり、ウェルメイドであると見なされるようになるが、まだそうではなかった。


彼らは、アメリカやイギリスのパンク・バンドに共通するDIY - ドゥ・イット・ユアセルフ - の美学を哲学的に持っていたが、彼らの場合、耳にしたものをその通りコピーし、それを噛み砕いてより分かりやすく、より日本的なものとして再解釈するという、アメリカやイギリスのバンド以上にホームメイドなスペクタクルを加えた。


プラスチックスが電子楽器やシンセをベースにした『カシオ』バージョンだとするならば、メロンはブラス楽器を加え、ダブ、R&B、グラムロックの影響を吸収し、より折衷的なパフォーマンスをしていたといえる。これは我々西洋人にはお馴染みのリファレンスだが、彼らの方法は時折新しくもあった。

 

当時は遊び心のある時代だった。物事はジャンルやスタイルに固まっておらず、すべてが見事にミックスされていた。カラフルで、そしてとても間抜けなものだ。誰もシリアスに受け止めなかった。 もちろん、すべての遊戯と同じく、そこには誰もが感じられる心の奥底にある深刻なステートメントはあったが、それが表現されることは決してなかった。楽しみを台無しにしてしまうから。

参照:

books.google.co.jp

  

Style Deficit Disorder: Harajuku Street Fashion - Tokyo

Style Deficit Disorder: Harajuku Street Fashion - Tokyo

  • 作者:Godoy, Tiffany
  • 発売日: 2007/09/20
  • メディア: ハードカバー
 

 

併せて以下もメモしておく。

東京人の特徴は案外ノン・ポリティックスだったりするよね。左や右のイデオロギーでものを見ない。それと関連しているが、日本の美は判るし、身近にあったものだけど、僕たちはそれを売り物にしようとは思わなかった。

ポップ・ミュージックの世界にいると、自分が何者であるかを判りやすく説明することをものすごくレコード会社に求められる。非常に判りやすいオリエンタリズムが求められる。しかも、僕は当時日本人でヒップホップに触発された音楽をやっていた。メロンの『Deep Cut』のレヴューでは、イギリスの音楽新聞に(日本人がヒップホップに触発された音楽をやるのは)ファンダメンタルに方向が間違ってるって書かれたよ。でも、僕がファンダメンタルに正しいんだよ。プラスチックスのときだって歌舞伎みたいな判りやすい日本を求められたんだ。でも、それはやらなかった。僕たちは普段からキモノ着て生活していたんじゃないだから。だから、音楽的にもあえて無責任な東洋フレーズみたいなものを僕たちは打ち出さなかった。それをハジメと僕は「ポップ・ライフ」って形容していた。だって、それでDavid ByrneやB-52’sは日本にはニューウェイヴがあるって発見してくれたんだ。

INTERVIEW: 中西俊夫

 


なぜ今、プラスチックスについて調べたかというと、TVODの著書『ポスト・サブカル焼け跡派』を読んだことがきっかけ。

millionyearsbookstore.com

1969年の全共闘の拡大を起点とし、2019年までに浸透した日本のサブカル(サブカルチャー)を通して今を紐解く優れた書籍です。以下コメカさんの書店からオンライン購入可能。

www.so-shun-shoten.com

自分は90年代の音楽や文化に触れて育った。『ポスト・サブカル焼け跡』でも触れられている、無邪気な意味の捨象によって歴史から音楽を切り離し記号化してミックスしたバンド、LUNA SEAにハマり、ほどなくしてメンバーSUGIZOさんを経由してトリップホップにもハマることになる。トリップホップには日本、メジャーフォース=中西俊夫さんの存在が欠かせないことは下のエントリーにも記している。

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また当時は、ジュディ・アンド・マリー、ラルクアンシエル、グレイといったバンドが超絶的な人気を博しており、何かしらのマスメディアを通じて彼らに日常的に触れている状況だった。その彼らの背後にはプラスチックスのメンバー佐久間正英さんの存在があった。

このように、サブカルかどうか、国内か国外かにかかわらず、自分の文化史のようなものを振り返る際のひとつの起点となるのはプラスチックスであり、彼らを客観的に、特に外からの視点で語ったものはないかと調べていたら、冒頭で訳した記事にたどり着いたという感じです。

 今後も、時系列と内外の視点を集めながら少しずつ整理していこうと思う。どこにたどり着くかはわからないけど。

 

お読みいただきありがとうございました。 下記からコロナへのご支援もぜひ。

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