オーストラリアのバンド、エアライン・フードの日本限定編集盤のライナーノーツを担当しました。マック・デマルコのフォロワーでもある彼らへメールインタビューを敢行し、シティ・ポップのみでなく愛聴する現行の日本の音楽について聞かせてもらいました。2019年3月20日にP-VINEより発売。
エアライン・フードについて
エアライン・フードは、オーストラリアのパースで活動する4ピースのインディー・サイケデリック・ポップ・バンドです。2016年3月に初作品をリリースし、これまで2作のオリジナルEPと、ライブ版、マック・デマルコのカバーを収録したEPの計4作を発表しています。
今回P-VINEからリリースされるCD『Japanese Value Pack』には、2016年12月リリースの『Time of Our Lives』と2018年3月リリースの『Fragments in Green』に加え、2017年5月にリリースしたライブ・カバー盤『Backyard Session』がボーナス・トラックとして収録されています。
ライナーノーツに書かれていること
バンド名の由来
彼らのバンド名エアライン・フードは日本語で「機内食」を意味します。実は英語圏において「エアライン・フード」という言葉にはミーム文脈もあり、その点について説明しています。タイトル『JAPANESE VALUE PACK』と相まって、とぼけたバンドであることがわかると思います。
Tame Impalaからの影響
彼らの地元パース出身のサイケデリック・バンドといえばテーム・インパラ。エアライン・フードの面々も大きな影響を受けたそうで、メールインタビューでも音楽面のみでなくいかに重要な存在だったかが語られています。
彼らが愛聴する日本の音楽について
バンドには、マック・デマルコに多大な影響を受けたメンバーが在籍しています。彼はマック・デマルコだけでなく、マック・デマルコを経由して日本の音楽も愛聴しているそうで、その点もメールインタビューで詳しく教えてもらいました。いわゆる70年代や80年代のシティ・ポップだけでなく、なんと現行のバンドも愛聴しているとのこと。
楽曲の制作方法、プロデュースの方向性
多くの楽曲で、ドラマーのジャック・シーアがマスタリングとミキシング、そしてプロデュースを担当しています。メールインタビューによって、彼がどういった視点でバンドの音源をプロデュースしているのかを答えてもらいました。
ジャックがSpotifyで公開しているプレイリストには、mndsgn、Kaytranadaなどの現行ビートメイカー、さらにPeggy GouやProject Pablo、Huneeといった現行ハウスプロデューサーの楽曲も含まれています。
インタビューを通じて、若干20歳前後のバンド・プレイヤーの幅広い視点に驚かされました。バンドをやっている方なら刺激を受ける内容だと思います。ジャック個人のSoundCloudのアカウント情報も教えてくれたので、ライナーに記載してます。
【おまけ】ライナーから外れた質問
文量の都合上、ライナーノーツに載せきれなかったメールインタビューと彼らの回答を掲載します。全ての質問に真摯に答えてくれて嬉しかったっす。
1.どのように音楽を始めたんでしょう?
ジャック・シーアとジャック・Aは昔からずっと友達で、高校時代にいくつかのバンドで一緒にプレイしたりしながら楽器の演奏方法を覚えたんだ。2015年に作曲とレコーディングを始めたんだよ。ジャック・シーアの高校の同級生だったコナーのサウンドクラウドにEPとしてアップしようというアイデアが発端だった。その年の暮れに最初のギグを行って、そこから作曲を本格的にはじめて、ベーシストとしてトム(ジャックの兄弟)を加えて今の体制になったんだ。
2.自分たちの音楽をどのように表現しますか?
80年代のシンセ・ポップとサイケ・ロックの間のような、それらが混ざった音楽だと認識してる。常に自分たちの音を進化させて実験しているんだ。今はジャジーなスタイル、ポップとエレクトロニクスにも手を出し始めてる。結果的に自分たちっぽい音になるけどね。
3.自分たちを代表する曲はどれでしょう?
それぞれの曲が異なるものだと思ってる。でも大半の楽曲で愛やグッド・タイム、青春のフィーリングのような実生活に基づいたことを書いているよ。今取り掛かっているアルバムのテーマは、自分たちが一緒に過ごした夏のノスタルジアがテーマなんだ。
4.自分たちの音楽は、皆さんが生まれ育った場所に影響を受けていると思いますか?それとも世界中の様々な音楽から影響を受けているのでしょうか?
地元のパースは自分たちの音楽に影響を与えているし、外からも間違いなく影響を受けている。パースの音楽シーンは小さくて孤立しているけど、素晴らしいコミュニティがあるんだよ。みんなお互いに協力的だし自分のやっていることを恐れない。音楽をするにあたって間違いなくインスピレーションをもらえてポジティブな場所だといえる。ビーチまで歩けば海がリラックスさせてくれるし、アイデアを与えてくれるしね。
自分たちはたくさんの音楽を聴いている。前述したように世界中のバンドから影響を受けていて、そうやって聴いたものから、自分たち好みのクールな音楽をつくるように努力しているんだ。
以上です。
個人的に、ライナーノーツを求めてCDを購入した経験がほぼありません。そんな自分が「どんなライナーノーツなら価値があると感じるか?」と自問しながら書き上げてみました。結果、彼らがたくさんの質問に真摯に回答してくれたおかげで、日本の音楽との距離感や現代的なバンドの楽曲の作成方法など、興味深い内容を網羅できたと自負しています。
ご興味があれば是非。