フィッシュマンズ『’98.12.28 男達の別れ』はストリーミング解禁後に海外での人気が倍増していた
2018年8月に、フィッシュマンズ『’98.12.28 男達の別れ』の海外での評価が近年高まっていることを記載しましたが、2018年8月のストリーミング解禁以降、海外でより一層人気が出ていたことがわかりました。
『’98.12.28 男達の別れ』の人気の推移
海外でフィッシュマンズの人気が高まっていることは、アメリカでインディーレーベルを運営するBen君が2018年7月に教えてくれました。彼曰く「理由はわからないが、2016〜17年頃から急速に人気が出ている」と。
この「人気が出ている」とは、具体的には2016,17年頃からアメリカのデータベースサイト『Rate Your Music(RYM)』で、350万枚のタイトルを含むチャートで80位に位置するほどの人気・評価になっていることを指します。この詳細は下記エントリーに記しています。
今回は、2016〜17年にかけてどのように人気が高まったのかをより具体的に知るため、RYMの評価者の数の推移を改めて調べてみました*1。
2016年の1-3月、2018年7-9月に評価者数が倍増
以下は2014年から2019年6月までの四半期別の評価者数の推移です*2。
まず2016年の1-3月に評価者数が前期比2.7倍、65人から177人に増加しました。この後9ヶ月近く前期比微増を続けます。おそらくこれが「2016〜17年にかけて人気が出ている」の時期だと考えられます。
しかし、実はその後2018年の7-9月には前期比1.9倍に伸び、1四半期あたりの評価者の数が545人に達していました。現在もこの規模のまま推移しています。
より詳細を確認するため、直近1年弱の月次推移も記載します。
ストリーミング配信を開始した2018年8月に評価者が倍増
2018年8月に評価者数が前月比1.7倍、140人から248人に増加しています。2018年8月は『’98.12.28 男達の別れ』を含むフィッシュマンズの諸作品のストリーミング配信が開始された時期と重なります。
つまり、2018年8月時点で「2016年〜2017年以降から人気が高まっている」という説明をしましたが、実はストリーミング解禁の2018年8月以降、人気がさらに倍増しているようです。
『’98.12.28 男達の別れ』だけでなく『Long Season』も直近10ヶ月で50位近くチャートアップしているのも気になるところ。いつか推移をチェックしてみます。
ストリーミングでのリスナー数の推移
では実際にストリーミング・サービスでフィッシュマンズは誰がどのように聴いているのでしょうか。『Chartmetric』などのストリーミング解析ツールを使えば、アーティストや楽曲毎に流入経緯、リスナー人数、フォロワー数、そしてそれらの推移を簡単に知ることができます。
『Chartmetric』は『良い暮らしができるインディ・アーティストを10万人に - 次世代ディストリビューターが目指す世界』で鼎談した渡邊さんのツイートで知りました。
ちなみにこのアナリティクスは、『Chartmetric』から。シリコンバレー発の解析スタートアップ。
— Takashi Watanabe (@ctakawatanabe) March 4, 2019
気が狂うほど様々なデータがとれるのですが、使う側の調べたい指標が明確であれば、自分の知るかぎり最高の解析ツールです。
全アーティスト・レーベルの皆さまにおすすめです。https://t.co/oIRKwz9nET pic.twitter.com/qMKODIjYJF
※残念ながら『Chartmetric』はアルバム単位では詳しい数値を追うことが難しいため、ここからは『'98.12.28男達の別れ』だけではなく、フィッシュマンズ全体・楽曲単位の推移の説明になります。
Spotifyのマンスリーリスナーの増減なども各都市でどのように増減しているかをわかりやすく表示してくれます*3。
以下は『'98.12.28男達の別れ』のライブが開催されてからちょうど20周年にあたる2018年12月28日周辺の増減です。この時期にアメリカの主要都市とロンドンでとんでもない勢いで増えています。
2018年12月は、RYMの評価者数も前後の月より多かったですし、やはりストリーミング上のフィッシュマンズのリスナー数の推移と比例していると考えて良さそうです。
20周年の当日は、ツイッターなどでも英語圏からのお祝いムードが目立っていました。
Happy Fishmans day! 💙
— HotMusicTakes (@HotMusicTakes) December 28, 2018
It's 20 years to the day since Fishmans' final performance at Akasaka Blitz, just months before Shinji Sato's passing.
The performance would go on to be released as 98.12.28 Otokotachi no Wakare in September 1999.
Give them a listen today if you can! pic.twitter.com/6mtXmVUiwx
この他にも『Chartmetric』を用いると様々な指標を追えます。が、細かい数値を羅列してもキリがないので、本エントリーでは、Spotify上でスパイクした2019年1月以降の、ちょっと意外な曲の意外な流入経路(プレイリスト)をピックアップしてみました。
『Oh! Mountain』の『Blue Summer』がアーティストに人気っぽい
Jason Mrazのプレイリストに入っている
700万枚近くのセールスを誇る『I'm Yours』でおなじみアメリカのシンガーソングライター、Jason Mrazが公開しているプレイリスト『Lively Up Your Self』にライブアルバム『Oh! Mountain』から『Blue Summer』が2019年1月29日に追加されています。今も聴くことができます。
Danger Mouseのプレイリストに入っていた
アメリカのプロデューサー、Danger Mouseのプレイリスト『Danger Mouse Jukebox』に、こちらも同じくライブアルバム『Oh! Mountain』から『Blue Summer』が2019年3月6日から26日にかけて追加されていたようです。
2人とも『Oh! Mountain』から『Blue Summer』をピックアップ、そして偶然にも2人とも1977年生まれでもあるという。なんなんでしょうか。
おわりに
RYMの『’98.12.28 男達の別れ』の評価人数の増加と、ストリーミングによるフィッシュマンズのリスナー数の増加は比例しているといえそうです。そして予想外の角度から予想外の楽曲がシェアされていることもわかりました。それだけフィッシュマンズの楽曲は間口が大きいんでしょうかね。もっと大勢の人がいろいろな楽曲を聴いてくれると良いですね。
そういえば2019年3月にはYouTubeでリアクション動画をアップする人も出現し始めたな。